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2015.07.23

アマゾンで決まり!?
はたまた早くも電子書籍離れか!? 

電子書籍元年と騒がれ5年以上が過ぎた。ユーザーにとっては、ほとんど何も起こらなかった業界であり市場だが、そろそろ勝負が見え、先行きが見えてきたか?

電子書籍元年と騒がれ5年以上が過ぎた。ユーザーにとっては、ほとんど何も起こらなかった業界であり市場だが、気になるデータがあった。

「eBook Journal 10月号」の中で、電子書籍の利用希望度を聞いた調査結果が紹介されていて、「利用したことはないが、今後利用したい」と思う人が、2009年(33.2%)から2010年(53.5%)にかけては大きく伸ばしたのに対し、2011年度は、44.0%と大きく減少しているのだ。
さらに、「利用したことはあるが、今後は利用したくない」と答えた人は、2010年の3.9%から5.6%へと逆に増えているのだ。

これだけさまざまなデバイスが販売され、コンテンツ量も少しずつとはいえ増えている状態で、「利用したくない」と答えているのはどういう理由なのだろうか。
紙のほうがいいとか、目が疲れるとかいろいろあるだろうが、そんなことは今にはじまった話ではないし、そのための技術革新が行われ、メーカーがこぞって似たようなデバイスを出したはずだ。

よく言われるのは、アメリカでは書店が少なく、電子書籍のメリットが多い(書店に行かなくても本を購入し読むことができる)が、日本ではそこらじゅうに書店があり、本を入手するのが簡単だということだ。
しかしこれだけでは、アマゾンの隆盛は説明ができないし、そこらじゅうにあるはずの書店が読者ニーズに十分に応えているとは思えない。

かつて通販業界でも似たようなことが言われた。アメリカにはすぐに行ける小売店がないので通販という販売手段が生まれ、消費者に認められたという話だ。
さらに、日本人は商品を詳細に吟味し、手にとって見ないと購入までいたらないなどという価値観まで加わり、日本では通販は一部のマニアックなもの以外では市場として育たないとも言う人がいた。
それが今や日本で伸びている数少ない小売チャネルが通販であり、先日発表された9月の売上でも昨対1.7%の増だ。

結局、購入プロセスが変わり、商品自体が変わる中で、ユーザー(読者)に対して新しい体験と感動を与えることができないことが最も大きな理由だ。紙の書籍を買って読んで、書棚に置き、また必要な時に取り出し読み返す。誰かに教えたり貸したりしながらさらに楽しみを増やすという現在の体験に電子書籍は勝っていないのだ。さらにその上に、あいも変わらず読者を置き去りにした業界の既得権益争いと主導権争いの混乱がそうした結果に上塗りしているのは誰しも感じているところだ。

そしてあいかわらず、まだまだ電子書籍プレイヤー企業間でのデバイスやフォーマットの提携、連携も少なくない。電子書籍市場は完全に勝敗が見え、79ドルで提供されるKindleによってアマゾンの一人勝ちが決まったという論調も多い中、楽天は電子書籍ストア「Raboo」で購入したコンテンツをソニーの電子書籍リーダーで取り込むことができるサービスをはじめるという。もはやユーザーは何が起こっているのかさっぱりわからない。これでは、冒頭のアンケート結果になるのも無理はない。

それでも新たなメディアとテクノロジーを駆使し、新しい体験を提供する「ニコニコ静画(電子書籍)」(ドワンゴ)のようなサービスもある。
先日発表された「ニコニコ静画(電子書籍)」は、ソーシャルリーディングの新しいプロセスと体験を提案するもので、「ニコニコ動画」と同じように、読んでいる電子書籍の上にコメントを投稿することができる。
「範囲指定コメント」や「Twitter連携機能」など、読者同士で書籍への感想を発信し、共有することができる、これまでにはなかったサービスだ。
さらに角川書店との連携によって、角川の「BOOK☆WALKER」で購入したコンテンツは、「ニコニコ書籍」上で閲覧することもできる。
また、ドワンゴの川上会長は「作品を作るにはクリエイターと同等かそれ以上に編集者やプロデューサーの役割が大きい」と語っている。
これは角川グループホールディングスの角川歴彦会長とドワンゴの川上量生会長による対談の中での言葉だが、まさに、現状の電子書籍業界の核心をついている。

電子書籍の将来という話になると決まって出てくるのは、権利問題とフォーマットの談義だが、読者・ユーザーが欲しいのは、テキスト情報だけではなく、その読書体験がもたらす感動や共感、知的楽しさであり、商品としての新しい形なのだ。


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